目次
宅建業免許の申請前に要件等を確認しましょう
宅建業免許を取得するためには、宅建業法に規定する以下の要件等に適合しなければ免許を受けることができません。
- 免許申請者と商号が適合していること
- 履歴事項全部証明書の目的に宅建業を営む旨の記載があること(法人の場合)
- 代表者及び政令で定められた使用人が常勤していること
- 専任の宅地建物取引士を設置していること
- 事務所を設置し、その形態が適合していること
- 営業保証金の供託又は保証協会に加入すること
- 欠格要件に該当しないこと(代表者・役員・政令使用人等)
1.免許申請者と商号が適合していること
免許申請は、個人又は法人のいずれでもできます。
ただし、申請者の商号又は名称が「法律によって使用を禁止されている場合」等は、一定の制限を受け、当該商号等の変更を求められる場合があります。
商号・名称が制限される例としては、以下のものが挙げられます。
●法律によって使用を禁止されているもの
●地方公共団体又は公的機関の名称と紛らわしいもの
(例)「○△公社、△□協会」等
●指定流通機構の名称と紛らわしいもの
(例)「○△□不動産流通機構」「○△□流通機構、○△□不動産センター、○△□流通センター、○△□住宅センター」等
●個人業者の場合
「○△□不動産部」や「○△□不動産課」など「部」「課」等を用いることで法人と誤認されるおそれがあるもの
●変体仮名及び図形又は符号等で判読しにくいもの
商号又は名称を決める際は、これらの制限にあたらないか十分に検討することが大切です。
2.履歴事項全部証明書の目的に宅建業を営む旨の記載があること(法人の場合)
法人が免許申請する場合、履歴事項全部証明書の目的欄に宅地建物取引業を営む旨などの記載があることが必要になります。
例えば、「宅地建物取引業」、「不動産の売買・賃貸借及び仲介・代理・交換」などが目的欄に記載されていれば通常は宅建業を営む旨の記載があるとされます。
なお、履歴事項全部証明書の目的欄に当該記載がない場合は、定款の目的変更登記を行い、履歴事項全部証明書の目的欄に記載されている状態にすることが必要です。
これから宅建業を営む会社を設立しようとする場合、又は宅建業を営む可能性がある場合は、事前に事業目的を検討し、「宅地建物取引業を営む旨」を入れておくと安心です。
3.代表者及び政令で定められた使用人が常勤していること
法人または個人の代表者は、原則事務所に常勤として宅建業を行うことが必要です。
ただし、代表者が他の会社を経営していて宅建業を営む事務所に常勤できない場合や新規に支店を設ける場合など、常勤できない事情があるときは、政令使用人(政令で定める使用人)を常勤として置くことで要件を満たすことができます。
政令使用人とは、支店長や営業所長など、「代表者からの委任を受け、宅建業に係る契約を締結する権限」を有する従事者のことです。
4.専任の宅地建物取引士を設置していること
宅建業免許を受けようとする事務所には、成年の専任の宅地建物取引士(※)を一定数置くことが義務付けられています。
(※)宅地建物取引士は、宅地建物取引士資格試験に合格後、取引士資格登録をし、取引士証の交付を受けている方をいいます。
設置すべき人数は?
設置すべき専任の宅地建物取引士は、1つの事務所において業務に従事する者5人につき1人以上の割合で設置する必要があります。
(モデルルームなどの案内所等については少なくとも1名以上の専任の宅地建物取引士の設置が必要です)
例えば、業務に従事する者が1~5人であれば1人以上、6~10人であれば2人以上、11~15人であれば3名以上となります。
この要件を満たさない場合は、免許を受けることができません。
また、免許取得後に専任の宅地建物取引士の数が不足した場合は、2週間以内に補充する等、必要な措置をとらなければなりません。
業務に従事する者とは
業務に従事する者には、宅建業のみを営む業者の場合、代表者、役員(非常勤役員を除く)、及びすべての従業員が含まれます。(継続的雇用関係にあるパートタイマーも含まれます)
また、宅建業を主としている業者は、人事や総務、経理などの一般管理部門の職員も業務比率に応じて「業務に従事する者」に含まれることになります。「主としている」とは、他の業務も兼業しているが、主に宅建業を行っているようなケースです。
受付、秘書、運転手など、宅地建物の取引に直接関係しない業務に従事する者であっても宅建業を営む業者に従事していれば同様に含まれます。
専任の宅地建物取引士の「専任」性
宅地建物取引士の専任性には、
(1)「常勤性」
と
(2)「専従性」
を含み、この2つの要件を満たさなければなりません。
具体的には、
(1)宅建業を営む事務所に常勤(常勤性)して、
(2)専ら宅地建物取引業に従事する状態(専従性)である
ことが必要となります。
常勤とは、宅地建物取引士と宅建業者間において継続的な雇用関係があり、通常の勤務時間に業務に従事することをいいます。
専任性が認められない例
以下のケースでは専任の宅地建物取引士とは認められません。
【常勤性から認められないケース】
- 他の企業等の従業員、公務員である場合
- 勤務時間が限られる非常勤やパート・アルバイトの従業員である場合
- 別の勤務先から退社後、又は非番の日のみ従事している場合
- 月に数日のみ出勤する場合
- 事務所と自宅の距離が著しく遠距離である場合
- 大学などに在学している者である場合
【専従性から認められないケース】
- 他の宅建業者の従業員である場合
- 他の宅建業者で専任の宅地建物取引士である場合
- 他の法人の代表取締役や常勤役員を兼務している場合
- 宅地建物取引士が、司法書士、行政書士など、他の士業と兼務している場合(※)
- 宅建業者の監査役である場合
(※)司法書士、行政書士などと兼務していても、同一事務所で常時勤務しており、専ら宅地建物取引業務に従事することができる体制にある場合は、専任の宅地建物取引士と認められる可能性があります。
契約社員や派遣社員については、宅建業者が社員を指揮命令できる関係にあれば認められる可能性があります。
専任の宅地建物取引士を置く際の注意点
宅建業免許の申請に際して、専任性以外にも宅地建物取引士としての前提条件をクリアしていなければ、専任の宅地建物取引士として受付けてもらえない場合があります。
以下の点について確認し、変更等が必要な場合は事前に対処しておくとスムーズに申請を進めることができます。
宅地建物取引士として登録し、取引士証の交付を受けているか?
宅地建物取引士の試験に合格しただけでは、宅地建物取引士として業務を行うことはできません。試験に合格後、資格登録して宅地建物取引証の交付を受けて初めて宅地建物取引士として認められ業務を行うことができるようになります。
そのため、取引士証の交付を受けてない者は、専任の宅地建物取引士になることもできません。他に取引士証の交付を受けている人がいない場合は、宅建業免許申請前に取引証の交付を受けることが必要になります。登録も行ってない場合は、2年以上の実務経験を証明して登録するか、実務講習を受けて登録し、取引士証の交付を受けるようにします。
取引士証の有効期間は5年間となっています。有効期間が切れていると宅地建物取引士としては認められませんので、有効期間切れにも注意する必要があります。
合格はしたけど、取引士証を持っていないとなった場合、宅建業免許の申請が遅れてしまいますので、事前の確認・準備が重要になります。
前職場の情報が残ったままになっていないか?
前の職場で専任の宅地建物取引士として勤務していた場合、「専任の宅地建物取引士」としての情報は削除(前会社側が手続き)されていても、「宅地建物取引士」本人(個人)が勤務先情報を抹消(取引士本人が手続き)していなければ、現職場では専任の宅地建物取引士として登録することができません。登録上は前職場に勤務している状態になっているためです。
したがって、現職場で専任の宅地建物取引士として登録しようとする場合は、まず「宅地建物取引士」本人の勤務先情報が抹消されているかを確認し、抹消ていなければ宅地建物取引士自身(委任可)が手続きを行い、宅地建物取引士資格登録簿の記載内容を変更する必要があります。
その際、住所・氏名・本籍地に変更があり、まだ変更していなければ一緒に変更しておくと1回の手続きで済みます。(「宅地建物取引士資格登録簿変更登録申請書」内でまとめて記載・変更することができます)
なお、新規免許申請の際は、免許を受けようとする現職場は免許証を受けるまで宅建業者ではないため、専任の宅地建物取引士の勤務先は登録されていない状態になっていないといけません。
逆に言えば、免許証が交付されて宅建業者になったら、宅地建物取引士側の手続きとして勤務先を登録することが必要になるということです。その場合、宅地建物取引士本人が現在の勤務先情報及び免許証番号について変更登録の申請を行います。
5.事務所を設置し、その形態が適合していること
宅建業を営むには事務所を設置しなければなりません。
事務所は宅建業務を継続的に行うことができる施設で、社会通念上も事務所として認識される程度の独立した形態を備えていることが必要とされています。
一般的なオフィス物件で、自社が独占して使用するのであれば通常問題ありません。
なお、宅建業を行わない支店は、宅建業の事務所に該当しませんが、本店は宅建業を行わなくても支店で宅建業を行っていれば本店も宅建業の事務所となります。本店は支店を管理する機能を有しているからです。
この場合、本店にも専任の宅地建物取引主任士の設置(従業者5人につき1人以上)や営業保証金の供託又は保証協会への加入が必要になります。
認められないケースと例外
戸建住宅の一室、マンションの一室、一つの事務所を他の法人と共同で使用することは原則認められていません。また、テント張り・プレハブなど仮設の建築物等も事務所として認められていません。
ただし、例外として(1)自宅の一部を事務所とする場合、(2)一つの事務所を他の法人と共同使用する場合は、一定の条件を満たせば事務所として認められる場合があります。
あくまで例外ですので、事前に平面図等を持参して窓口で相談が必要です。
(1)自宅の一部を事務所とする場合
自宅を事務所にする場合は、以下の要件が満たされているかをチェックして下さい。
- 自宅の出入口以外に事務所専用の出入口がある。又は他の部屋(居住部分)を通らずに事務所に出入りできる。
- 他の部屋と事務所が壁で明確に区切られている。
- 事務所とする部分が事務所としての形態を整えており、事務所のみに使用している。
- 分譲マンションや賃貸マンションについては、管理組合、大家等から事務所としての利用承諾書が必要。
(2)一つの事務所を他の法人と共同使用する場合
- 他社の事務所と自社の事務所の出入口がそれぞれあり、他社の事務所を通ることなく出入りができること。
- 他社の事務所と固定式のパーテーション(高さ180cm以上)などで明確に区切られている。
- 事務所とする部分が事務所としての形態を整えており、事務所のみに使用している。
6.営業保証金の供託又は保証協会に加入すること
免許が下りただけでは(審査が通って免許通知を受けた時点)、まだ宅建業の営業を始めることはできません。
営業ができるのは、宅建業の免許証を現実に受け取ってからです。つまり、免許証が交付されてからということになります。
免許証の交付を受けるために必要な前提条件が、営業保証金の供託又は保証協会への加入です。
なぜ、営業保証金の供託又は保証協会への加入しなければならないのか?重要な目的の一つが、宅建業者と取引する一般消費者を保護するためです。
保護の方法は、一定の金銭を供託・納付することでなされますが、それがなされていない状態では、まだ一般消費者を金銭面で保護する体制が整ってないことになります。
そのため、現実に営業するためには、営業保証金の供託又は保証協会に加入して宅建業の免許証の交付を受ける必要があるのです。
供託金の額は、主たる事務所(本店)が1,000万円、従たる事務所(支店等)が500万円(1店につき)です。保証協会に納める弁済業務保証金分担金は、主たる事務で60万円、従たる事務所(支店等)で30万円(1店につき)です。どちらを選んでもいいのですが、ほとんどの宅建業者は負担が少ない保証協会への加入を選択しています。
詳しくは、「供託と保証協会への加入について」をご覧ください>>
7.欠格要件に該当しないこと(代表者・役員・政令使用人等)
宅建業免許の取得において、代表者(申請者)、役員(取締役等・非常勤含む)、政令で定められた使用人(支店長、営業所長等)などが、「能力や信用に問題がある場合」、「刑罰を受けたことがある場合」、「宅建業に関して不正な行為をした場合」などについては、免許を受けることができません。
これを欠格事由と言い、これらの事由にあたれば免許拒否又は免許を受けた後であれば免許取消になります。
その事由については、宅建業法において規定されています。
代表者、役員、政令で定められた使用人などが以下の事由に該当しないか確認しておきましょう。
欠格事由
能力および信用 |
●成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者 |
宅建業に関する不正行為等 |
●免許の申請前5年以内に宅地建物取引業に関し不正または著しく不当な行為をした者 ●宅建業に関し不正又は著しく不誠実な行為をするおそれが明らかな者 |
刑罰を受けたことがある場合等 |
●禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 ●宅建業法違反、暴力的犯罪(傷害・暴行・脅迫・背任等)により罰金刑に処せられ、刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 |
免許取消処分を受けた者等 |
●免許不正取得、情状が特に重い不正不当行為又は業務停止処分違反をして免許を取り消されて5年を経過しない者 ●免許取消処分の聴聞の公示をされた後、相当の理由なく解散又は廃業の届出を行った者で、その届出の日から5年を経過しない者 ●免許取消処分の聴聞の公示の日前60日以内に役員であった者で取消日(免許取消)又は届出の日(解散又は廃業)から5年を経過しない者 |
その他 |
●事務所に法定数の専任の宅地建物取引士を置いていない場合 ●免許申請書もしくはその添付書類の中に重要な事項について虚偽記載があり、又は重要な事実の記載が欠けている場合 ●暴力団員、又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 ●暴力団員等がその事業活動を支配する場合 |
なお、禁錮以上の刑に処せられ執行猶予がついた場合は、その執行猶予期間中は欠格事由に該当しますが、執行猶予期間が満了した翌日からは欠格事由に該当しません。
例えば、懲役2年、執行猶予3年の刑であれば、執行猶予3年が満了した翌日から免許を受けることができます。
また、刑を受けても控訴、上告中は欠格事由に該当せず、免許を受けることができます。
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