駐車場の賃貸借契約書は車庫証明の使用承諾証明書の代わりに使える?その条件とは?
目次
賃貸借契約書もOK。でも条件あり。
結論から言うと、駐車場の賃貸借契約書を車庫証明の使用承諾証明書(使用権原疎明書面)として使うことができます。
でも、それには条件があります。
それについて、順を追ってお話ししていきたいと思います。
まず、他人から駐車場を借りて保管場所とする場合は、車庫証明の申請時に「保管場所使用承諾証明書」が必ず必要になります。(自己所有の場所を保管場所とする場合は「自認書」)
単に使用承諾書とも呼ばれる書面ですが、車の使用者に保管場所の使用権原があることを証明する重要な書面です。通常、管理会社やオーナーに発行してもらいます。
「疎明書面」を添付しないと車庫証明が下りない
使用権原が証明されていないのに車庫証明を申請でき、交付されるとなると、権原がない場所を勝手に保管場所として申請できたり、車庫飛ばしなどの不正を助長し兼ねません。
そのため、車庫証明を取ろうとするときは、申請書と併せて使用承諾書を提出(添付)し、使用権原を証明(疎明※)することが法的に義務付けられています。
(※)疎明とは、一応確かであることを示すもの。証明よりも緩やかな証明。
法律上は、「自動車の保有者が当該自動車の保管場所として使用する権原を有するものであること」が保管場所の要件として規定されています。(自動車の保管場所の確保等に関する法律施行令/第1条第1項第3号)
その疎明方法については、「自動車の保有者が当該申請に係る場所を保管場所として使用する権原を有することを疎明する書面を添付しなければならない」として”書面”の添付が義務付けられています(自動車の保管場所の確保等に関する法律施行規則/第1条第2項第1号)。
このことから言えるのは、権原を有することが確認できる「疎明書面」を添付する必要があり、それがなければ車庫証明が下りない(受理されない)ということです。
とすると、車庫証明を取るためには何としても「疎明書面」を用意しなければいけません。
その「疎明書面」の一つが「保管場所使用承諾証明書」です。
なお、自己所有の土地建物を保管場所にするのであれば疎明書面として「自認書」を用意することになります。自認書は自分で書いて用意するものなので、用意できないことは通常起こり得ません。
しかし、他人所有の駐車場、つまり賃貸アパート・マンション、月極駐車場などを借りる場合は、何らかの事情で使用承諾証明書を発行してもらえない、あるいは管理会社等へ支払う使用承諾証明書の発行手数料を節約したいと考えることもあるでしょう。
そのようなときに使用承諾証明の代わりに使える疎明書面が「賃貸借契約書(写し)」です。
もっとも、これは裏ワザとかではなく疎明書面として福岡県警察がホームページで明示しているものです。
ただし、無条件に賃貸借契約書を使用承諾書の代わりに使えるわけではありません。
福岡県警察のホームページには保管場所使用権原疎明書面に利用できるものとして「駐車場賃貸借契約書の写し等」を列記していると同時に、カッコ書きで「保管場所使用承諾証明書の内容に準じた記載がなされているものに限る」との条件が付されています。
「賃貸借契約書」を使用権原疎明書面として使う場合の条件
「賃貸借契約書」を疎明書面として使う場合、その賃貸借契約書には一定の内容が記載されている必要があります。
その内容が、やや抽象的ですが「保管場所使用承諾証明書の内容に準じた記載がなされているもの」です。つまり、使用承諾証明書に記載されている内容が網羅されている契約書であれば問題なく使えることを意味しています。
では、どうのような内容が契約書に記載されていればいいのか?
「保管場所使用承諾証明書の内容に準じた記載」とありますので、一般的には次の内容が契約書に記載されている必要があると考えられます。
ただし、「準じた記載」として判断要素に幅を持たせているため、警察署や担当者によって取り扱いが異なる場合もありますので、あくまで一般論として参考にして下さい。
駐車場の契約書に記載されている必要がある内容
(保管場所の使用者と契約者が同じ場合)
- 保管場所の所在地
駐車場の住所(所在地)で、使用承諾証明書における「保管場所の位置」に対応します。区画番号があれば、その番号を含みます。
車庫証明申請書の「自動車の保管場所の位置」に記載した住所・区画番号と一致している必要があります。 - 借主の住所・氏名(名称)
使用承諾証明書における「保管場所の使用者」の住所・氏名に対応します。
車庫証明の申請者と保管場所の使用者は一致するので、車庫証明申請書の申請者の住所・氏名が記載されている必要があります。なお、引っ越しに際して新規に駐車場を借りる場合で、その契約が引っ越し前(住民票を移す前)であれば契約者の住所は引っ越し前の住所が記載されていると思います。車を持っていれば引っ越し後すぐに駐車場も使うでしょうから、このような契約(住民票を移す前の契約)は普通に行われることです。
このような場合は、引っ越し前の住所が契約者住所になることは当然ですので、他の項目が満たされていれば、契約書の契約者住所欄に申請者の住所(転居後の住民票住所=車庫証明申請書の住所)が記載されていなくても問題ないことが多いです。(ただし、警察署によって取り扱いが異なる場合がありますので、管轄の警察署に事前に確認することをお勧めします)
- 駐車場の契約期間
承諾証明書における「使用期間」に対応します。
契約書を使う場合、契約期間の残りが少なくなっているときは要注意。 - 契約日
承諾証明書における「年月日」の記載欄に対応します。 - 貸主の住所・氏名(名称)
承諾証明書における「保管場所の所有者又は管理者(保管場所の使用承諾者)」の住所・氏名に対応します。住所・氏名で所有者等の確認がとれるため、電話番号は無くても問題ないと思われます。
これらがすべて記載されていても注意すべき点があります。
駐車場の契約期間です。
契約期間が、過ぎている場合や残りの契約期間が1ヶ月を切っているような場合は、疎明書面として使えない可能性があります。これは保管場所使用権原疎明書面も同様で、使用期間が短かったり、使用承諾書を随分前に発行してもらっていて残りの使用期間が残り少ない場合は要注意です。
ただ、契約書における契約期間が過ぎている場合や残りの期間が少ない場合でも、自動更新の記載がある場合や現在も駐車場を利用していることを証する書面(領収証のコピーなど)を併せて添付することで認められる場合もあります。このようなケースについては、事前に申請先の警察署に確認を取っておいた方がよいでしょう。
なお、保管場所の使用者と契約者が異なる場合は、通常契約書には使用者の住所・氏名は記載されていないと思いますので、契約書は使えないことになります。
例えば、夫がアパートの契約者で、妻名義の車をアパートの駐車場に停めるケース。
妻名義の車なので、車庫証明の申請者は妻となり、契約書記載の借主(夫)の住所・氏名と一致しません。
このような場合は、契約時に妻を駐車場の使用者とする内容を入れてもらったり、契約書に加えて妻が使用者であることを疎明できる書類を併せて提出するといった方法もありますが、あまり一般的ではありませんので、無難に使用承諾書を発行してもらった方が確実です。
契約書のコピーを提出
申請のときは、保管場所を使用する権原を有していることの「疎明書面」として『契約書のコピー』を申請書等に添付して提出します。
疎明の内容に漏れがないように、上記の条件で説明した内容が記載されているページをすべてコピーするようにして下さい。1枚にすべて記載されていれば1枚コピーすればOKです。
管理会社等によっては、もとより保管場所使用承諾証明書を発行せず、契約書を使用承諾書として使ってもらう取り扱いをしているところもあります。その場合は、契約書のつくりを保管場所使用承諾証明書に準じる形で1ページにまとめられているケースもありますので、そのページをコピーして添付すれば大丈夫です。
まずは保管場所使用承諾証明書、次に契約書
疎明書面として一番確実なものが「保管場所使用承諾証明書」です。
記入ミスなどがあった場合は別ですが、所有者等に依頼して正規に取得したものであれば、疎明書面として問題になることはありません。ですので、余程のことがない限り使用承諾書を発行してもらうことをおすすめします。
ですが、何らかの理由で使用承諾証明書を用意できない、あるいは発行してもらえない場合もあると思います。その際は上述したように一定の条件はありますが「賃貸借契約書(写し)」を利用します。
ただ、記載内容が条件を満たしておらず使えないケースもありますので、契約書の内容はしっかり吟味するようにして下さい。判断が付かない場合は、申請先の警察署や行政書士に問い合わせをして、確認してもらうのもよいでしょう。
なお、契約書を使用する場合は、トラブルにならないよう、管理会社等に「契約書を疎明書面(使用承諾書)として使ってもよいか」の確認を取った上で使用するようにした方が安心です。
車庫証明はそれに続く「名義変更」や「住所変更」などの添付書類として非常に重要な役割を持つ書類です。使用承諾書でつまづくと再度の準備に時間と労力がかかってしまうことになります。
車庫証明に続く手続きを滞りなく進めるためにも、使用承諾書は確実に用意したいものです。